トラスト6号地は、唐沢支流がその真ん中を流れ、沢の両側にはコナラ群落、スギ、ヒノキなどの他、昔からのモミ、アカマツなども残る夏場でも涼しさを感じられる場所です。6月初旬、そこでムカシヤンマを見ました。

 ムカシヤンマは大型の日本特産種で、“ムカシ”の名のとおり雌の成虫は産卵器官として生殖弁ではなく、ムカシトンボと同様に産卵管を有すると言う原始的な特性を維持している数少ないトンボです。
 生息地は山地や丘陵地で、幼虫(ヤゴ)はコケ類などが繁茂する湿気の有る土質を好み、そこに穴を掘って生活します。また、アキアカネなどの幼虫(ヤゴ)は、通常、成虫になるまでに3~6ヶ月程度ですが、ムカシヤンマは3年もの時間がかかります。

 埼玉県では2018年にムカシヤンマを準絶滅危惧種(NT)に指定し、その種及び生息環境の保全を始めました。また、環境省が実施する環境調査のための10種の「指標昆虫」の一つにも選ばれ、この昆虫の生息が、良好な自然環境であるか否かの指標にもなっています。

 8月中旬の一日、気温32℃、晴れてはいるが雲が多く、蒸し暑い日だった。
 沢を渡り、ヒヨドリバナが群生しているこの地に入るとヒグラシの大合唱、林縁の木々にはそれぞれ、ヒグラシが何匹づつか止まり鳴いていた。一本の木の丁度目の高さに一匹のヒグラシがいて、良く見ると腹の上部に白い、繭のような物体が付いていた。調べてみるとセミヤドリガの終齢期の幼虫で、セミに寄生する珍しい種であることが分かった。セミヤドリガ科の種で、日本に生息するのは2種だが、セミに寄生するのはセミヤドリガだけである。

 その生態は興味深く、先ず、8~9月頃、成虫のガは木の割れ目などに卵を産み付ける。越冬した卵は、翌年、セミの成虫が現れる8~9月頃孵化する。孵化した幼虫は、植物などを自分で食べるのではなく、飛んで来たセミに寄り付き、その体液を吸って1齢~4齢まで成長する。終齢の5齢幼虫になると、体全体が蠟状の白い綿毛(写真)のようなもので覆われる。7~9月頃、十分成長した幼虫は、糸を吐きながらセミから離れ、地面や草に降り、そこで蛹になる。
 なお、寄生されたセミは体液を吸収され弱ることはあるが、死に至ることはないと考えられている。