3月の初め、「山仕事の広場」周辺で作業がありました。朝の温度は10度以下、風も冷たく、作業着の上にジャンパーそして手袋が必要でした。

 この時期、広場のコナラの木はまだ、冬枯れのままでした。木肌を見ると、その窪みにヨコズナサシガメの幼虫が寒さから身を守るかのように、身を寄せ合ってじっといました。

 この幼虫は、10月頃から越冬に向けた集団を形成し、4月頃に活動を開始するまでの6~7ヶ月間、そのままの形態で越冬します。不完全変態をするこの種は、春になると蛹にはならず、直接羽化します。成虫の期間は、2週間~2ヶ月位なので、約1年の寿命の半分以上が幼虫での越冬期間になります。肉食であるヨコズナサシガメは餌である昆虫の幼虫などが豊富になる春に合わせて羽化する、と考えられています。この種は、”サシガメ”の名前から分かるように捕食するアリ、ハエなどの昆虫を前足で抑え込み、口吻(針状の口)を獲物に突き刺し、消化酵素を含む唾液を獲物の体内に注入します。この消化酵素は、獲物の筋肉、内臓などを液化し、それをサシガメは吸い取り栄養とします。

 コナラの木はこの時期、既に春の兆しを感じ取り、胴吹きし始めています。また、秋に地上に落ちたどんぐりは、しっかりと地面に根を張り、発芽を待っています。

 8月中旬の一日、気温32℃、晴れてはいるが雲が多く、蒸し暑い日だった。
 沢を渡り、ヒヨドリバナが群生しているこの地に入るとヒグラシの大合唱、林縁の木々にはそれぞれ、ヒグラシが何匹づつか止まり鳴いていた。一本の木の丁度目の高さに一匹のヒグラシがいて、良く見ると腹の上部に白い、繭のような物体が付いていた。調べてみるとセミヤドリガの終齢期の幼虫で、セミに寄生する珍しい種であることが分かった。セミヤドリガ科の種で、日本に生息するのは2種だが、セミに寄生するのはセミヤドリガだけである。

 その生態は興味深く、先ず、8~9月頃、成虫のガは木の割れ目などに卵を産み付ける。越冬した卵は、翌年、セミの成虫が現れる8~9月頃孵化する。孵化した幼虫は、植物などを自分で食べるのではなく、飛んで来たセミに寄り付き、その体液を吸って1齢~4齢まで成長する。終齢の5齢幼虫になると、体全体が蠟状の白い綿毛(写真)のようなもので覆われる。7~9月頃、十分成長した幼虫は、糸を吐きながらセミから離れ、地面や草に降り、そこで蛹になる。
 なお、寄生されたセミは体液を吸収され弱ることはあるが、死に至ることはないと考えられている。